2016年8月5日金曜日

年中行事の大切さ

昨年、新国立劇場演劇研修所とちょっとした仕事をしたので、時々、ご招待いただく。今日も第十期生の公演に行ってきた。

朗読劇「ひめゆり」脚本 瀬戸口郁、構成 道場禎一 演出 西川信廣@新国立劇場小劇場 The Pit

明日は8月6日だ。毎年、この時期になるとメディアはこぞって戦争を取り上げた。戦争のドラマや映画を流し、メディアの戦争関与についての反省の特集記事を掲載していた。そんなに遠い昔のことではない。

今、8月にメディアで取り上げられる戦争の話題はいつの間にか激減しているように思う。

以前のそれは、いわば年中行事だった。斜に構えた者などは、そう位置づけて鼻白ませていたかもしれない。僕にもそんなところがなかったとは言わない。でも、年中行事は年中行事であるがゆえに大切なものなのだ。8月に戦争のことを語らなくなったら、僕たちはきっとまた戦争を始める。

『ひめゆり』はもちろん、ひめゆり学徒隊を扱ったもの。沖縄の一高女と女子師範、それぞれの広報誌のタイトル「乙姫」と「白百合」を合わせて「ひめゆり」。沖縄戦の最中、看護救援に駆り出され、多数が死んだ。

劇は石垣島から女子師範に進学した3人の少女に焦点を当てたもの。朗読劇らしく台詞と地の文とを訳者が本を手に持ちながら発し、最低限のアクションで補う。


この研修生公演は3年の研修期間の最後の年に行う者。修了生なども参加するけれども、中心は最終年度の研修生が務める。さすがに3年目ともなると、皆、立派な役者だ。すすり泣きの声はあちこちから聞こえた。