2014年11月14日金曜日

変化する色

Claveという辞書の初版に寄せた序文でガブリエル・ガルシア=マルケスは、ある日、amarilloを引き、そこに「レモンの色」と書いてあったので、「闇の中にとり残された」と書いている。コロンビアやメキシコ、キューバなど、彼の知る国々ではレモンは黄色ではない。緑色だ。むしろライムのような色だ。

そのClaveのamarilloの欄に「レモンの色」と定義があるのだから、皮肉なものだ。

ところで、今回のアカデミアの辞書改訂は、その黄色=レモン色に関して微妙な変化があった。limón(レモン)の定義は前の版では「常に黄色」だったのが、今回、「しばしば黄色」に書き換えられている。amarillo(黄色)の定義は「黄金やレモン、エニシダ、等々に似た色」だったのが、今回は「黄金か卵の黄身に似た色」と、レモンが抜けている。

もちろん、ガルシア=マルケスのみの功績ではないのかもしれないが、アカデミアはレモンが黄色だという立場を変えたのだ。


素晴らしい。

注) その後、こういう指摘をうけた。つまり上に書いたような定義の変化は既に22版においてなされているということだ。なるほど、そのとおり。ぼくはうっかり、手許にあった版を引いて、それが22版だと思い込んでいたのだが、実はそれ、21版だった。22版は今は手許にないのだった(どこに行ったのだろう? 実家か? 書庫か?)。

買ったばかりの23版を捲っていて、たまたまlimónの項目が目にとまり、そこでガルシア=マルケスの言葉を思い出し、読んでみると、あれ? と思い、手許にあった旧版(21版)を引いてみて、違いに気づいて、amarilloも違いを確認し、そして上の文章を書いたのだった。


不明と軽率を恥じる次第だ。ここで書いた記事は13年前のものと思っていただければ幸甚。