2012年6月10日日曜日

南へ北へ

日が改まってしまったので昨日である今日、マチネーで劇を観た。

構成・演出 長塚圭史『南部高速道路』@シアタートラム

名前からわかるとおり、フリオ・コルターサルの短編の翻案だ。高速道路で渋滞にはまり、そのまま日が流れてそこに一種の共同体ができる、という不条理状況劇。原作はフランスが舞台だが、週末を田舎で過ごし、東京に戻ろうとしていた10組13人(+子供がひとり)の物語に翻案している。

傘をうまく使って立ち往生する車を表していた。複数の声を同時に響かせる作りがいい。真木よう子が思いのほか低くよく響く声で心地よい。彼女の過去が暴かれるという話でもないし、愛憎どろどろなわけでもない。ほのめかされるだけで多くを思わせる過去を背負った人々のにわか共同体が解体するまでの日々。

パンフレットに解説を寄せた外岡秀俊はレベッカ・ソルニット『災害ユートピア』を引きあいに出して、アクチュアルな解釈をしていた。

出演は、他に黒沢あすか、江口のりこ、梶原善など。

終わってすぐ池袋に立教大学ラテンアメリカ研究所主催、連続キューバ映画上映会。黒木和雄『キューバの恋人』の当時を関係者が振り返るドキュメンタリー、マリアン・ガルシア『アキラの恋人』、およびその後の寺島佐知子さん、+伊高浩昭さんのトークを。

年表を整えて順を追って話す寺島さん、その枠を逸脱して先取り、明快に話す伊高さんのコントラストが楽しいトークであった。

映画自体は既にDVDで観ていたのだが、とりわけ、『キューバの恋人』挿入歌に使われた(ガルシア=ロルカの詩に曲をつけた)Iré a Santiago が、映画が公開されなかったにもかかわらず合唱曲としてスタンダード化したとのエピソードが興味深く思われた。翻案との流通を巡る偶然の物語。

200人ばかり入るらしい会場は満員。キューバって人気なのだった。うむ。さりげなく『チェ・ゲバラ革命日記』でもかざしていればよかった。