2011年1月29日土曜日

Ⅵ、そしてぐったりする週末夜

リカルド・ピグリア「短編小説についての命題」はまだ続いている。今日はⅥ


チェーホフ、キャサリン・マンスフィールド、シャーウッド・アンダーソン、『ダブリン市民』のジョイスに由来する近代版短編小説は結末に驚きを用意することを断念している。ふたつのプロット間の緊張関係を注意深く作り出すばかりで、それを解決して終わろうとはしない。新しい作品ほど秘密のプロットの語り方は回避的になっている。ポー張りの古典的短編小説はひとつのプロットを語りながらもうひとつのプロットの存在を知らせる。それに対して近代的短編小説はふたつのプロットをまるでひとつしかないように語る。

ヘミングウエイの氷山の理論は短編小説のこうした性質の変化の過程で最初に出された統合案だ。つまり、いちばん大切なことは語られないというものだ。秘密のプロットが語られないことがらや暗黙の了解事項、ほのめかしなどによって構築される。

27日(木)は旦敬介『ライティング・マシーン:ウィリアム・S・バロウズ』(インスクリプト、2010)の出版記念パーティに呼んでいただいた。広尾のメキシコ料理店《サルシータ》で。バロウズの作品と手紙とを読みながら、その南米への旅の足跡を辿り、『ジャンキー』やら『クィア』やらの記述の成立を分析するこの本は、旦さんのような人でなければ書き得なかったというか、彼の本領発揮だと思う。まだ途中までしか読んでいないのだが、本を持っていってサインをいただいた。そしてその他の方々と旧交を温めたり新たに面識を得たり。

今日、20日(土)は大学院博士後期課程の二次面接。4人。イタロ・ズヴェーヴォ、ハーマン・メルヴィル、フリオ・メデムあるいはベルナルド・アチャーガ、そしてジョアン・カブラル・デ・メロ・ネトらと語る。

こうした場合、一緒に面接をつとめる同僚の先生方の学識の深さに常に驚かされる。ここからこんな視点を得てこの情報を出し、このようにまとめるか! と勉強になることばかり。ついついこちらがメモしてしまう。受験生ではないのに。

とても疲れた。夜は抜け殻になっている。