2010年10月7日木曜日

祝! ノーベル賞受賞

授業が始まってちょうど1週間。くたくたになって帰宅し、PCを開くと、ツィッターのTLに不穏な動きが。

むっ?

マリオ・バルガス=リョサのノーベル賞受賞が決まったとのことだった。

1960年代には「ラテンアメリカ文学」のブームがあった。ブームとは結局のところ、バルガス=リョサの鮮烈なデビュー、フエンテスの暗躍、ガルシア=マルケスの爆発的売れ行き、だった。作家の側だけを見れば、そうなる。たぶん。バルガス=リョサはブームの片翼だった。『ラテンアメリカ文学の〈ブーム〉』という本を書いたホセ・ドノソによれば、ブームはキューバでの言論弾圧(「パディーリャ事件」として知られる)をもとに起こったイデオロギーの分裂だとのことだが、ガボはカストロの側につき、バルガス=リョサはカストロへの公開書簡を送り、このふたりの仲にも亀裂が入った。最後はバルガス=リョサがガルシア=マルケスを殴ったというのは、有名なエピソード。その意味でも、ふたりは両翼だった。

一方、作風も、一見、ふたりは双璧をなす。……のかな? 奇想天外のガルシア=マルケス(これも本当は違うといいたいが)に対し、バルガス=リョサは複雑な仕掛けをほどこすけど、それを解きほぐせば実にリアリスト風で、わかりやすい(そしてまた、これも表面的、部分的に過ぎる印象)。

『緑の家』が岩波文庫から再版を果たしたばかりだ。年明けには大作『チボの狂宴』も翻訳が出る。それなりに遇されているのだけど、しかし、やはりガルシア=マルケスのひとり勝ちの観が強い状況下では、過小評価されているような気がしないでもない、そんな存在だった。

もちろん、ガルシア=マルケスも面白いが、バルガス=リョサも面白い。『密林の語り部』とか『パンタレオン大尉と女たち』などは、とりわけぼくは好きなのだけどな。

ぼくが望むことは、たぶん、絶版になっているこれらの翻訳が再版されることと、まだ翻訳されていない作品がひとつでも多く翻訳されること。