2010年3月15日月曜日

疲れた目に世界は怖く、美しい

ぼくにも家族があって、その構成員のひとりが一番下の孫娘の小学校卒業のお祝いに上京したので、孫の親の家に泊まる代わりに送り迎えはぼくの担当ということになり、空港まで車に乗って迎えに行ったのだが(それが土曜日の話)、とてつもなく目が疲れた。眼球を取り出して裏にびっしりと張り付いた神経を1本1本やさしくマッサージしたいくらい疲れた。目が疲れると、なれているはずの車の運転が、いつもより少し怖く感じられた。

目がもう一段階悪くなろうとしているのか、それとも単なる寝不足だろうか? ビタミン不足? 疲労?

ぼくもスーパーで買い物をする。我が家のすぐ隣には業界最大手だか以前最大手だったかのスーパーマーケットがあって、雨が降ってもぬれずに行けるので、よく利用する。食品などを買って払いを済ませ、品物をプラスティックバッグに入れながら、疲れた目を癒すべく遠くを眺めていた。

何しろ疲れた目を癒すのだから、ただ眺めていただけだ。だから最初、それが何を意味するかわからなかった。

昨日がその日だったというのに、ホワイトデーのプレゼントコーナーと書いてあったように見えた。特設展示場の期間限定の展示物だ。ともかく、その方面に目をやっていた。

最初何だかわからなかったものが、だんだんと意味ある物体に変じてきた。箱に入った何やらよくわからないいろいろな商品に混じって、下半身、というか、臀部、そけい部というか、つまり尻だけのマネキンに女性ものと思われる下着が穿かせてあった。それが2体。1体にはニットのかわいらしいというか、あまり色気のないもの、もう1体にはレースの赤い、まあ何というか、大人向けのもの。

今さらそんなもので赤面するほど純情でもないし、欲情するほどフェティッシュでもない(若くもない、と言うべき?)、近くに行って確かめるほど厚かましくもない。それが本当にホワイトデーのプレゼント用お勧め商品として展示してあったとして、プレゼントに下着を贈るというそんな風潮に眉根を顰めるほどのモラル(?)も持ち合わせていない。やりたければいくらでもやれ。好きにしろ。ぼく自身は極度にシャイな人間だから、決してそんなプレゼントを贈ったりはしないだろうけど。

でも、それがこの大手スーパーの、食品売り場正面の展示スペースに、堂々と自身の存在を主張して置かれていることには、まだなんだか違和感のようなものを感じてしまう。しかも1日遅れだというのに、あの堂々たる居直りっぷり! 

きっと目が疲れてるんだな。何かを見間違えているんだ(でも、何を? どんな欲望があればそんな見間違えが起こるというのだ?)。目薬が切れかけていたから、それも買って帰ろう。問題の展示場の、2階への吹き抜けとエスカレーターを挟んだ逆の側にはちょうど薬局がある。

スーパーから帰って、数日分のポテトサラダを作り置きし、土曜日に母から土産にもらったコブシメ烏賊の味噌漬けと里芋を切り、小松菜の味噌汁を作ったはいいが、……はて、……ぼくの目が必要としているビタミンEだかBだかは、これらから摂取できるのか?